不当解雇で解雇予告手当を請求するな!

あなたが会社から不当な解雇をされたとしたら、その会社には未練はないけれども、できればその会社から損害賠償みたいないくらかの金銭的補償を受けたいと考えるのではないでしょうか。
そう考えたときに、安直に労働基準法上の解雇予告手当の支払いを会社に請求するのは「ちょっと待ってください!」
不当解雇で解雇予告手当を請求すると、結果的に損することがあります。
詳しいことは以下をお読みください。

 

目次
1. 解雇予告手当
(1)解雇予告手当とは
(2)解雇予告手当の計算方法
(3)解雇予告手当が支払われないケース
2.不当解雇とは
(1)労働契約法第16条
(2)解雇期間中の賃金支払い請求権
3.不当解雇の解決内容
(1)多くは労使間で和解する
(2)会社から「解決金」を支払ってもらう
4.まとめ

 

 

1.解雇予告手当

(1)解雇予告手当とは
使用者が労働者を解雇する場合、通常は解雇日の30日前までに解雇の予告をしなければなりません。しかし、使用者が何らかの事情により解雇日の30日前までに解雇の予告をしないときは、使用者は労働者に対して、解雇予告手当という名目の金銭を支払わなければなりません。
解雇予告手や解雇予告手当の支払いについては、労働基準法という法律で規定されています。
労働基準法は、使用者が労働者を雇い入れるときに設ける労働条件として、最低限度の基準を定めた法律です。したがって使用者が労働者と労働契約を結ぶときに、労働基準法で定める基準を下回る労働条件を設けることはできず、必ず労働基準法で定める基準以上の労働条件を設けなければなりません。

 

(2)解雇予告手当の計算方法
解雇予告手当は、使用者が労働者に対して、解雇の予告をしないときに支払わなければならないものです。解雇予告は解雇日の30日以上前までにしなければならないものですから、解雇予告をした日が解雇日までに30日を切っている場合には、解雇予告手当の支払いが必要になります。例えば、使用者が労働者に対して、解雇日の14日までに解雇予告をした場合、30日−14日=16日となるので、16日分の解雇予告手当の支払いが必要となります。使用者が労働者に対して解雇予告をせず即日解雇した場合は、30日−0日=30日ですから30日分の解雇予告手当の支払いが必要になります。
では1日当たりの解雇予告手当の額はどのように計算するのでしょうか。これは解雇予告日の直前の賃金締切日前3ヶ月分の賃金から1日当たりの平均の賃金額を計算して出てきた額を1日当たりの解雇予告手当の額とします。1日当たりの平均賃金の計算方法は2通りあります。一つは解雇予告日の直前の賃金締切日前3ヶ月の賃金の合計をその間の総日数で割って1日当たりの平均賃金を出す方法、もう一つは解雇予告日の直前の賃金締切日前3ヶ月の賃金の合計をその間の総労働日数で割ってその60%を1日当たりの平均賃金とする方法です。
例示しましょう
@賃金月額30万円の正社員、賃金締切日が毎月末日、解雇日が9月15日で即日解雇の場合
解雇日の直前の賃金締切日は8月31日ですから6月、7月8月の賃金の合計30万円×3ヶ月=90万円を6月から8月までの総日数で割って1日当たりの平均賃金額を求めます。
90万円÷(30日+31日+31日)=9,783円(円位未満四捨五入)
そうするとこの場合の解雇予告手当の額は
9,783円×30日分=293,490円となります。
A時給1,000円のアルバイト、1日の労働時間が4〜6時間、賃金締切日が毎月末日、解雇日が9月15日で即日解雇、6月の賃金60,000円、7月の賃金75,000円、8月の賃金90,000円、6月から8月までの総労働日数が45日の場合
60,000円+75,000円+90,000円÷45日×60%=3,000円・・・1日当たりの平均賃金額
3,000円×30日=90,000円
よって、この場合の解雇予告手当の額は9万円となります。

 

ちなみに、Aの場合に、6月から8月までの賃金の総額は225,000円ですが、これをその間の総日数92日で割ると2,446円(円位未満四捨五入)となり、総出勤日数の60%と比較すると2,446円<3,000円ですから、1日当たりの平均賃金額が高い方の総賃金額÷総労働日数×60%で算出した額を解雇予告手当の計算の基礎とします。
つまり、
a)解雇予告日の直前の賃金締切日前3ヶ月の賃金の合計をその間の総日数で割って1日当たりの平均賃金
b)解雇予告日の直前の賃金締切日前3ヶ月の賃金の合計をその間の総労働日数で割ってその60%
上のa)またはb)のいずれか高い方で計算します。

 

(3)解雇予告手当が支払われないケース
業務上横領や長期の無断欠勤等労働者の責めに帰すべき重大な事由を理由として会社が労働者を解雇したときに、会社が事業場を管轄する労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けた場合は、使用者は労働者に対して解雇予告手当を支払う必要はありません。
解雇予告除外認定の対象となる事由は次のとおりです。
@ 会社内における窃盗、横領、傷害等刑法犯に該当する行為があった場合
A 賭博や職場の風紀、規律を乱すような行為により、他の従業員に悪影響を及ぼす場合
B 採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合
C 他の事業へ転職した場合
D 2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合
E 遅刻、欠勤が多く、数回にわたって注意を受けても改めない場合

2.不当解雇とは

(1)労働契約法第16条

労働契約法という法律は、労使間で労働契約を結ぶときまたは既存の労働契約の内容を変更するときに、その契約締結や変更の原則を規定したものです。
その労働契約法の中で、解雇に関する要件を規定した条文が第16条です。
労働契約法第16条は次のとおりです。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
この条文の意味するところは、解雇理由に該当する具体的事実がない場合や、解雇理由に該当する具体的事実がある場合でも、社会の一般常識に照らしてその程度の理由では解雇に値しないと判断されるときは、使用者は解雇する権利を濫用(乱用)したものとして、解雇無効とする(解雇時に遡って解雇がなかったこととする)、ということです。
解雇時に遡って解雇がなかった、ということは会社がなした解雇日の翌日以降も労働契約が続いているということになります。労働契約が続いているということはどういうことかというと、会社に対して労働者としての権利を失っていないということです。

 

(2)解雇期間中の賃金支払い請求権
解雇が無効という場合、解雇日の翌日以降も労働者としての権利を失わないということになります。では、労働者としての権利を失わないというときの労働者の権利とは何しょうか。労働者の権利は、会社と労働者との間の労働契約の内容にもよりますが、その最たるものは会社に対する賃金支払い請求権です。労働者は労働の対価として賃金を支払ってもらう権利を会社に対して有しています。
では労働者が会社から不当解雇された場合で解雇が無効と判断された場合の賃金支払い請求権はどうなるのでしょうか?解雇された日以降労働者は会社で働いてはいません。そうすると働いていない限り会社に対して賃金の支払いを請求できないのでしょうか?
実は、会社がなした解雇が無効と判断されたときは、労働者は、実際に会社で働いていない場合でも、会社で働いたものとみなして、解雇された日の翌日から解雇無効と判断されて職場復帰した日までの賃金の支払いを会社に請求することができます。この根拠となる法律は民法第536条第2項にあります。
民法第536条第2項は次のとおりです。
債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。
小難しい条文ですが、解雇無効の場合に当てはめて噛み砕いて言うと次のとおりです。
会社がなした解雇が無効と判断されるときは、会社の違法な行為によって会社で働くことができなくなったのだから、それは会社に責任があるものだから、労働者は解雇期間中の賃金支払い請求権を失うことはない。

3.不当解雇の解決内容

(1)多くは労使間で和解する

では解雇が無効と判断される場合、法律上は解雇がなかったということですから、労働者は職場復帰して会社で働くことができるということになります。
しかし、実際には、解雇された労働者は、勤務していた会社が大企業の場合は別として中小の会社であれ、ば職場復帰しで再び働きたいと思うことはあまりありません。また、会社の使用者としても、いったん解雇した労働者を再び職場復帰させることには抵抗があります。
こういったときに、どういった解決を図るのかというと、会社から労働者に対して解決金名目の和解金を支払うことを条件に、労働契約については解雇時に遡って終了するという内容で和解をします。
和解は、裁判外の当事者間での合意による場合もありますし、裁判所の労働審判手続や訴訟中途での裁判上の和解による場合もあります。
なお、労働審判手続で調停が成立した場合や労働審判がなされたときのその内容は、裁判上の和解と同等の効力を生じます。裁判上の和解と同等の効力ということは、相手方である会社が任意に解決金を支払わないときは、労働者は裁判所に対して強制執行の申立てができ、強制執行の申立てを受けた裁判所は、会社の財産(会社名義の預貯金や取引先に対する売掛金、その他会社に帰属する財産)を差押えることができるということです。

 

(2)会社から「解決金」を支払ってもらう
そうすると不当解雇の解決は職場復帰を希望しない限り、会社から解決金名目の金銭を支払ってもらうことを目的とすることになります。
このとき、妥当な解決金の額はいくらなのかということが問題になります。
解決金の額は、解雇された日までの勤続年数や、解雇の理由(例えば解雇は無効だけれども労働者にも相応の責任がある場合には会社にすべての責任があるとは言えないので)、会社の財務状況等により左右されます。
著者の経験からいうことですが、勤務年数が1年以上ある場合で解雇無効と判断されうる場合、解決金の額は賃金の6ヶ月分相当が一つの目安となるように思います。これは裁判所の労働審判手続を労働者をサポートして得た知識や裁判外のあっせんでの合意内容から言えることです。また東京地方裁判所の労働審判手続では、解雇された日の翌日から労働審判手続で調停が成立する日までの間の賃金相当額を解決金の目安としている、という話を聴いたことがあります。
そうすると、妥当な解決金額は、ある程度勤務年数がある場合は、最低でも解雇日の翌日から和解が成立する日までの賃金相当額、できれば賃金の6ヶ月相当以上ではないかと思われます。

4.まとめ

以上のことを総合すると、不当解雇の場合、解雇予告手当として平均賃金の30日分(即日解雇の場合)の支払いを会社に求めるよりも、解雇無効を主張して、会社から解決金を支払ってもらうことを条件に労働契約を終了することで、会社と和解する方がより多くの金銭を会社から支払ってもらうことができるということになります。

無料冊子「不当解雇で解雇予告手当を請求するな!」

無料冊子「不当解雇で解雇予告手当を請求するな!」好評配布中!!
無料冊子をご希望の方は下記にアクセスしてそのページからメールを送信してください。
無料小冊子申し込みページ
折り返しPDF冊子をダウンロードできるURLを記載したメールをお送りします。
メールに記載したURLをクリックして冊子をダウンロードしてお読みください。
なお、無料冊子の郵送等による配布は行っていませんのでご了承ください。



 
トップページ 事務所概要 業務・料金案内 無料労働相談会 お問い合わせ・ご相談